LIVE REPORT

ちょうど桜の散り始めた、4月15日。4月半ばだというのに、列をなす人はコートにマフラー、ダウンジャケットなど冬の装いが目立つ。というのも、この日はなんと日中の気温がなんと7度!寒さに震えつつ、 開場を待つ。
22回目となる風呂ロックのアーティストは七尾旅人さん。そして、ゲストとして、七尾旅人×やけのはら「Rollin' Rollin'」でトラックメイカーとしてアレンジを担当したDORIANさんが出演する。
開場してから、早速ドリンクコーナーへ行くと、数ある種類の中に、何やら「風呂ロックオリジナルドリンク」なるものを発見。その名も「森林のかほり」。緑色の透明なそれは、たしかに「かほり」漂う入浴剤を入れたお風呂のよう。トライアングル・ジンジャーとライムで作っているそうだ。細かいところにまで銭湯らしさが垣間見え、思わずにやりとしてしまう。

開演時間となり、麦わら帽子姿の七尾さんがそろりとステージに登場。ざわついていた会場が、歓声に包まれ、次の瞬間、静まりかえった。
「まず最初に二十歳の頃作ったラブソングを歌います」七尾さんの一言から、ライブはスタートした。今まで聞いたことのないリバーブ感。音が体に浸み込んでくる。掻き鳴らすギターの音、力強い歌声、優しく響く高音、強く吐きだす息の音、きらめくようなシンセサイザーの音。銭湯で聴く七尾旅人は、雄大で、観客全体を包み込むようだ。
かと思えば、曲中に突然MCが始まる。時折りユーモアも飛び出し、どっと笑いが起こる。盛り上がる観客に、七尾さんも「今日来てくれたみんな、本当にありがとう!」とテンションが上がっている様子だった。

そして会場全体が一番の盛り上がりを見せたのは、ゲストのDORIANさん登場後に演奏された「Rollin' Rollin'」。観客からラップのできる女の子を募り、今までにない、一日限りの「Rollin' Rollin'」の演奏が行われたのである。
七尾さんが歌いだすと、観客は皆、リズムに合わせて体を横に揺らしながら、フレーズを口ずさむ。そしてラップ部分に入ると、会場内は緊張感と高揚感が入り混じった。そして、歌詞カードを片手に立ち上がった彼女。その名も「みちのはら」!(ミチコさんなので、「みちのはら」と命名されていた。)
ラップ部分を見事に歌い上げた彼女。会場からは歓声が沸き起こり、最後は七尾さんも椅子の上に立ち上がる。会場が一体となって、活気に満ち溢れた瞬間となった。

また、この日は、七尾さんによる重大発表も。4月16日よりスタートする「DIY STARS」についてだ。これはアーティストが自分のサイトでデジタルコンテンツのダウンロード販売を行うことができる(「自力配信」できる)システム。(DIY STARS http://diy.tunk.jp/
90年代にデビューし、20世紀から21世紀の、音楽シーンの過渡期を見てきた七尾さんは、一つ一つ言葉を選ぶように、「DIY STARS」に馳せる思いを語った。
「やっと21世紀が始められる。」
七尾さんは、思いを述べる中で、そう口にした。
七尾さんはこれからどんな21世紀を見せてくれるのだろう。
ライブが終わった後もなお、観客の目はきらきらと輝き続けていた。

写真/雨宮透貴・寺沢美遊
ライブレポート/佐藤美季